【短編】あたしとバカと自縛霊
「好きな人?」


あたしは目だけ也久に動かす。視線は合わない。


「まさかとは思うけど、幽子さん?」


言ってからあたしは辺りを見渡した。


「今はここにはいないよ」


それにどうせ見えないだろ?也久がぼそりと呟く。


まぁ、その通りだけどさ。


だけど我ながら質の悪い冗談だと思う。だって、幽子さんと付き合いたいと思う人間がいるだなんて考えられないもの。


そんな楽観にも似た考え。いや、お願いかな。


そうであって欲しくない。って願望。


まさか、それが打ち払われるとは思わなかったよ。
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