俺様の飼い猫。
「おかえりなさい、お嬢様。」

こういうのを執事というのでしょうか…
頼香をいつも送り迎えしているのは、高良紘生さん。
頼香に聞いたら、高良さんはの中学生の頃に両親を事故で亡くしたらしくて、亡くなった両親と古くからの親友だった頼香の両親が引き取ったみたい。
頼香が3歳で、高良さんが14歳。
来たばかりの頃から、高良さんは優しくて、頭も良くて、学校から帰って来れば頼香パパの手伝いをしていたって。
きっと、引き取ってくれた恩を、若宮家を手伝い、忠誠を誓い、お仕えすることで、恩を返そうとしてるんじゃないかって、頼香は一度話してくれたことがあった。
とっても悲しそうな顔で…。

車に乗れば、急に昨日のことを思い出す。

「日奈ちゃん?」

急に黙り込んだあたしを心配したのか、隣に座っている頼香が顔を覗き込んできた。

「大丈夫。ちょっと昨日のこと思い出しただけだから。」
「昨日のこと~?」

反対側からは、葵が興味深々のような目であたしを覗き込んでくる。

まったくこいつらは…。

「後で話す!」

2人をたしなめるように、あたしは話を途中で切る。

「では、早く着くように近道しましょうか。」
「ありがとう、紘生。」

言葉通り、いつも頼香ん家に行く時とは違う道を通る。
もちろん、いつもよりも早く着いたわけで。


< 14 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop