この想いを君に…3
「智道くん!」

たまたまウチのチームのパドックを訪れた中学3年、全日本では同じGP125で走っている池田 智道は一瞬、逃げかけた。

「ちょっと、何で逃げるの?」

桜は智道の腕をしっかりと握りしめる。

「いやいや…」

智道はあたしを見つけると

「む、むっちゃん!」

救世主を見つけた!というような目であたしを見つめる。

「頑張ってね!!」

ただ、それだけを言いに来たみたい。

あたしは頷いた。



って、自分のチームの応援をしなよ、智道。



智道の親、池田 隆道さんは現役レーサーの時、パパとはライバルでよく争っていたみたい。

今も監督同士で火花散らしているけれど、チーム体制は池田さんの方がうんといい。

池田さんは今も昔もワークス。

メーカーの最新技術がそのまま使える、最強チーム。

あたし達からすれば羨ましい限り。

祥太郎は去年、そこにいたけれど、今年は古巣に戻った。

理由を聞いても、教えてくれなかった。



いい環境が全てじゃない、それだけを言われた。
< 119 / 247 >

この作品をシェア

pagetop