この想いを君に…3
「光さん、飛ばしすぎ」

祥太郎は隣で楽しそうに呟いた。

2分08秒台からタイムが落ちない。

時々07秒台に上がる。



「むっちゃん!」

パドックの通路からあたしを呼ぶ声が聞こえる。

振り返ると光さんの妹、奏さんと両親がいた。

奏さんが手を振るのであたしも振り返す。

「どうぞ」

あたしは中に招き入れた。

「ご無沙汰しております。そして今回はありがとうございました」

パパが光さんの両親に頭を下げる。

「いえいえ、こちらこそ光がお世話になりっぱなしで」

光さんのお父さんが笑った。



親同士が話している間にあたしと奏さんはモニターを見つめる。

「これってお兄ちゃん、速いの?」

「うん、今、一番だよ」

「そっかぁ」

奏さんは微笑んだ。

「私、全然レースなんてわからんから、何が何やらさっぱり…」

そう言っても。

光さんを見つめる顔は嬉しそうだった。
< 154 / 247 >

この作品をシェア

pagetop