この想いを君に…3
小雨の中、睦海の前に出る。

睦海は嬉しそうに笑って

「一緒に走って!」

と、手を差し出した。



一緒に走ると…

早いよ、睦海!

それでも、走るのだけは。

昔、よくしていたから。

同年齢に比べたら早いかも。



どこからともなく

『おー!』

という声が上がる。



睦海と手を繋いだまま、1位でゴールした。



睦海は係員に紙を渡す。

順位が決まると、アナウンスが借り物の紙を読み上げる。



『一位は一番尊敬出来る人、二位は…』



尊敬、ねえ…



「どうもありがとう」

睦海に言うと

「これはやっぱりパパじゃないと…」

と照れていた。





睦海と走る事なんて、いつぶりだろう?

隣で楽しそうにしている睦海を見ると、小さい時の睦海を思い出す。



サーキットで歩いていると、よく後ろを走って追い掛けて来てたな、とか。

いつも

『パパー!』

と、用事もないのに叫んでいたり。



色々、思い出す。



「門真さんのお父さん、足、早いね!!
ビックリしちゃった!」

2位の女の子が睦海に話掛ける。

「しかも、カッコイイね!!」

「ありがと!」

「足早いの、お父さん似だよね!!」

「そーかなあ?」

「そうだって!!」



他のクラスの子なら、上手く会話出来てるのにな。



気付かれないように、コッソリため息をついた。
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