この想いを君に…3
あたしは腕の力を抜いた。



「…なんだよ、殴らないのかよ?」

その瞬間、悠斗が交野の胸ぐらを掴んだ。

「なぜ、そこまで睦海に嫌がらせをする?」

「陸上部員にとっては邪魔な存在だから」

交野は吐き捨てるように言った。

「顧問はいつも『クラブをしていない門真さんはあんなに速いのに、負けては困る!』と言う。
みんな努力をしているんだ!」

まだ…根に持っているのか。

あたしは呆れた。

「門真さえいなくなれば。
もっと伸び伸び出来るのに…
期待されている麻里なんて…常にプレッシャーをかけられて。
どんなに可哀相かわかるか?」



ああ、そうか。

交野は同じクラスで同じ陸上部の麻里と付き合っていたんだ。



「期待されているなら…」

悠斗は冷ややかな目を交野に向けた。

「もっと努力して結果を出せよ。
睦海はみんながテレビを見て笑っている時間、ずっとトレーニングをしているよ。
…結果を出すために」
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