不良
 春男は実家のことを忘れた。母親の独り暮らしのことも、実家の雨漏りのことも、きれいに忘れた。そして、理恵との甘美なセックスにおぼれた。

 二人は広い浴槽で昼間からふざけあい、セックスの真似事をした。春男は理恵の指先にもてあそばれ、つい風呂場で精気をとばしたりした。なぜか、理恵はそんなことを喜ぶのだった。バスタブに大股を広げて、赤身を湯からニユッと突きだすと、春男の大股の下に正座した理恵の口が落ちてきた。そして、妙に動かすのだ。耐えきれなくなって爆発した
 食事は出前だった。金は理恵がすべて支払った。食べ散らかした皿は洗いもせず、ベッタリと汁で汚したまま、ドアーの向こうへ重ねて置いた。
 部屋の中では薄い透けた羽織のような物をきた。羽織の下は素っ裸である。二人だけの誰に遠慮のいらぬ生活だった。そして気がむけばウオーターベッドでのプレイをした。

「おまえの金は一体いくらほどあるねん。」春男は理恵の乳首を指でもみながらきいた。理恵はそれには返事せず、ウフフ、ウフフ。と笑って、春男の男を攻め立てた。すると、春男もその気になって、質問のことなど忘れて、理恵の口プレーのとりこになった。

 春男は理恵の正体を知りたいと思った。しかし理恵は油断とすきをみせなかった。春男を部屋に一人きりにさせるようなことはしなかった。絶えず油断なくみはっているかのようにして、そばにいた。

 あるとき、春男が外で夕食をしたいと持ちかけた。すると、理恵は賛成した。二人は余所行きの服に着替えてマンションをでた。マンションの下までタクシーを読んだ。行き先は、理恵にまかせた。理恵のセットしたのは、ホテルのディナーであった。

「こんなんとちゃうねん。おれの食いたいのは、こんな甘いのやないんや。」と春男は、肉の焼いたのや、魚の揚げたのを前にしながら、不満に思っていた。そこで、思い切って理恵に提案した。「おれの知ってる店に行かんか。ほら例の新世界や。あそこのホルモンはうまいぞ。」理恵はそういうわれて、一瞬考えた。そしてオーケイをだしてきた。


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