不良
先生。ほんだら、お願いしますね。」バイト先の主人はそういうと、テーブルの伝票を掴んで立ち上がった。探偵も立ち上がる。春男も続いて立ち上がった。
「法務局の前で九時にな。」探偵はそういうと、サッサと帰った。「法務局て、あんた行ったことあるか。」と主人がきいてきた。「知りまへん。」「まあ、ようききや。はじめてやかららな。ほんまはついて行きたいけど、用事もあるしな。あのおっさんは、あんな感じやけど、根はええ人間なんや。」「そうでっか、なんかうさん臭いでっけどな。」
翌朝はホテルを早めにでた。ホテルの受付にインターネット画面で調べてもらった。その経路のプリントをもらっていた。<おれもサラリーマン気分やのう。>と呑気な考えで地下鉄動物園前駅へ向かった。午前七時半の駅は、春男が普段みかけない人たちばかりであった。混み合う電車をはじめて経験した。若い女性の化粧の臭いが鼻についた。
駅員をみつけるとすぐに行き先のプリントをみせた。春男は教えられたとおりに、エレベーターで駅から歩道にでた。すぐ谷町筋が走っている。春男は二十歳ぐらいの女性に声をかけて、法務局への行き方をきいた。「こっちです。」と同じ方向だという女性がいった
植え込みのある入り口から入ると、玄関ホールに探偵が立っていた。春男は連れ立って案内してくれた女性に頭を下げて礼をいった。<あんな子もおるねんな。>と女性が去るのを見送った。「どないかしたんかいな。」と探偵にきかれてしまった。
二人はエレベーターで二階の不動産部門のカウンターへ行った。探偵は手慣れた感じで、黒い分厚い、大きなバインダーに挟まれた地図を開いている。「メモだしてや。」探偵は春男に指示した。「場所はここやな。そしたら、地番はこれや。」探偵は嬉々とした。
ガラス張りの筆記台に立ち、探偵はなにかをスラスラと書いた。「大城くん。印紙買ってきてや。二千円や。」「印紙ですね。」春男はカウンター中央にある印紙売り場に行く。「印紙二千円。」「印紙二千円ね。」中年女性が春男の言葉をオーム返しにしてきた。
「登記印紙やぞ。」と椅子に座っている探偵が、春男に注意するようにしていった。
「法務局の前で九時にな。」探偵はそういうと、サッサと帰った。「法務局て、あんた行ったことあるか。」と主人がきいてきた。「知りまへん。」「まあ、ようききや。はじめてやかららな。ほんまはついて行きたいけど、用事もあるしな。あのおっさんは、あんな感じやけど、根はええ人間なんや。」「そうでっか、なんかうさん臭いでっけどな。」
翌朝はホテルを早めにでた。ホテルの受付にインターネット画面で調べてもらった。その経路のプリントをもらっていた。<おれもサラリーマン気分やのう。>と呑気な考えで地下鉄動物園前駅へ向かった。午前七時半の駅は、春男が普段みかけない人たちばかりであった。混み合う電車をはじめて経験した。若い女性の化粧の臭いが鼻についた。
駅員をみつけるとすぐに行き先のプリントをみせた。春男は教えられたとおりに、エレベーターで駅から歩道にでた。すぐ谷町筋が走っている。春男は二十歳ぐらいの女性に声をかけて、法務局への行き方をきいた。「こっちです。」と同じ方向だという女性がいった
植え込みのある入り口から入ると、玄関ホールに探偵が立っていた。春男は連れ立って案内してくれた女性に頭を下げて礼をいった。<あんな子もおるねんな。>と女性が去るのを見送った。「どないかしたんかいな。」と探偵にきかれてしまった。
二人はエレベーターで二階の不動産部門のカウンターへ行った。探偵は手慣れた感じで、黒い分厚い、大きなバインダーに挟まれた地図を開いている。「メモだしてや。」探偵は春男に指示した。「場所はここやな。そしたら、地番はこれや。」探偵は嬉々とした。
ガラス張りの筆記台に立ち、探偵はなにかをスラスラと書いた。「大城くん。印紙買ってきてや。二千円や。」「印紙ですね。」春男はカウンター中央にある印紙売り場に行く。「印紙二千円。」「印紙二千円ね。」中年女性が春男の言葉をオーム返しにしてきた。
「登記印紙やぞ。」と椅子に座っている探偵が、春男に注意するようにしていった。