不良
目的の家は天神社の脇にあった。歩道に植え込みがあって鬱蒼としている。文化財の看板がみえる。なんたらという有名な江戸時代の人の生家が隣にある。
探偵は躊躇なく呼び鈴を押した。額の汗をハンカチでぬぐう。すると、インターホーンの向こうから、返事の声がしてきた。「御家のことでこみいったことですわ。」と探偵が謎をふっかけるようにしていった。家人は不安を感じたらしく、受話器を置いた。
二、三分待たされた。下着姿だったのかも知れない。慌ててスカートをつけてるらしい。恐々ドアを開けたのは、七十年配の上品そうな老婆だった。老婆は素早く探偵と春男をみる。そして、何者だろうと推察している。「なんですのん。」と上から目線できいた。
老婆は探偵や春男をのことを<上客であるはずもない。>と思い、タカをくくってきた。「理恵さんのことですねん。」探偵は不動産登記事項証明書をみせた。老婆は探偵の持った書面の住所をマジマジとみつめた。春男は二人のやりとりを息をとめてみていた。
「わかりません。」と老婆は書面を探偵のほうに押し返した。「わからんて、理恵さんはお宅の人なんでしょ。」探偵はあやふやなまま、あて推量をしてきいた。「わたくしは留守番の者です。そんなものをいきなりみせられても困ります。」というと、ドアを閉めようとした。
探偵は素早くドアに足をはさみこみ、「すみません、すみません。」と平謝りした。春男は探偵の対応に感心した。<すごいなあ、おれにはこんな真似はできそうもないな。>と思うのだった。
「あかん。おばはん、根性がきついな。」と探偵はドアをこじあけるのをあきらめた。そして向こう隣の家を訪問した。探偵は応対にでた六十代女性に書面をみせていた。春男は探偵の後ろにピッタリとくっついていた。「ここにある名前の人は、隣の娘さんですね」と畳みかけた。「知りません。娘さんて、みなさん嫁いでおられますよ。」と、応対の女性にいわれてしまった。足を中に押し進めようとする探偵は、押し戻されてしまう。
探偵は躊躇なく呼び鈴を押した。額の汗をハンカチでぬぐう。すると、インターホーンの向こうから、返事の声がしてきた。「御家のことでこみいったことですわ。」と探偵が謎をふっかけるようにしていった。家人は不安を感じたらしく、受話器を置いた。
二、三分待たされた。下着姿だったのかも知れない。慌ててスカートをつけてるらしい。恐々ドアを開けたのは、七十年配の上品そうな老婆だった。老婆は素早く探偵と春男をみる。そして、何者だろうと推察している。「なんですのん。」と上から目線できいた。
老婆は探偵や春男をのことを<上客であるはずもない。>と思い、タカをくくってきた。「理恵さんのことですねん。」探偵は不動産登記事項証明書をみせた。老婆は探偵の持った書面の住所をマジマジとみつめた。春男は二人のやりとりを息をとめてみていた。
「わかりません。」と老婆は書面を探偵のほうに押し返した。「わからんて、理恵さんはお宅の人なんでしょ。」探偵はあやふやなまま、あて推量をしてきいた。「わたくしは留守番の者です。そんなものをいきなりみせられても困ります。」というと、ドアを閉めようとした。
探偵は素早くドアに足をはさみこみ、「すみません、すみません。」と平謝りした。春男は探偵の対応に感心した。<すごいなあ、おれにはこんな真似はできそうもないな。>と思うのだった。
「あかん。おばはん、根性がきついな。」と探偵はドアをこじあけるのをあきらめた。そして向こう隣の家を訪問した。探偵は応対にでた六十代女性に書面をみせていた。春男は探偵の後ろにピッタリとくっついていた。「ここにある名前の人は、隣の娘さんですね」と畳みかけた。「知りません。娘さんて、みなさん嫁いでおられますよ。」と、応対の女性にいわれてしまった。足を中に押し進めようとする探偵は、押し戻されてしまう。