不良
春男は母親の愚痴から逃れるようにして、実家からでた。十メートルほど歩いて、振り返ったとき、例のブルーシートが目に飛び込んできた。<裁判で勝ったら、真先に屋根をなおしてやるさかいな。待っておれよ。>そう思い、地下鉄の駅のほうへ歩いた。

「大城君やないの。」と道の向こうから声がかかった。春男が顔を向けると、中学のときの同級生の「あけみ」であった。あけみの実家は、春男の実家から直線で五百メートルのところにある。あけみは実家へ向かう途中だったらしく、自転車に乗っていた。

「久しぶりやね。元気してたん。」あけみはずっと前から春男に色目を使っている。あけみは、歌手の五代と似かよった目の大きい美人である。二人は道で立ち話をした。「今からどうするのん。」春男はあけみにその気があるかを窺ってみた。

二人は天王寺駅まで行った。春男はあけみの気持ちを知り尽くしているので、強引に木陰へ誘った。「イヤ。こんな真っ昼間から。」と、あけみは春男の腕を引いて本通りのほうへ戻ろうとした。「ええねん。」と耳元で囁くと、春男はグイッと、あけみの体を木陰のほうに押した。木陰の裏はホテルの入り口になっている。

二人はもつれあった。くんずほぐれつ、上になったり、下になったりした。あけみは春男の最後の最後を四つんばいにされた尻の上で受けた。春男はその後始末をしてやった。すると、「大城君は前から優しいね。」といい、あけみは余韻のある春男のそれに口づけた
ホテルでは二時間ほど、男と女の関係を続けた。あけみは水商売が長いらしく、春男には甲斐甲斐しく尽くした。春男が欲しがれば、すぐに冷蔵庫からビールを持ってきて酌をしてやった。おまけに、口移しのサービスまでするのであった。

「うちなあ、ここで雇われママやってんねん。」春男は渡された名刺をじっくりみつめた「ほんなら、おっさんがおるねんな。」春男はあけみを追求した。あけみは首を左右にふり、「お金の関係や。」と愛人関係であることを否定した。二人はもう暮れようとする空の下で、左右に別れた。

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