不良
見物人がガヤガヤとし、なにが起きたのだろうとみると、酔っぱらった浮浪者の汚いのが中年の女の腕を引っ張って歩いていた。浮浪者が左に動くと、見物人はサアーッと波のように引いた。今度は右だ。腕をつかまれている女は、その都度小さく悲鳴をあげた。
誰もが恐がって浮浪者に立ち向かう者はいない。浮浪者はとうとう女を引きずって、マイクのある中心地までやってきた。浮浪者の目的は、「おれにも一曲歌わせろよ。」ということであった。しかし浮浪者はロレツがまわらないほど酔っぱらっていた。
「やめときや。」と顔見知りの売女が春男の腰のベルトを引っ張った。春男はなおも前へ行こうとした。「やめときゆうてるやろ。」と売女はベルトを持つ手に力をこめた
「そやけど。」春男は売女の顔をみた。売女は顔を左右にふった。春男は仕方なく台風の去るのを待つことにした。カラオケ仲間の連中は、下を向いて風の通りすぎるのを待っている様子であった。見物人の中にも女を救う酔狂な者は誰もいなかった。
「やっぱりあかん。」春男はそういうと、その場を飛ぶようにして浮浪者の近くまで行った。浮浪者は酔っぱらった目で春男をみると、「なんやねん、われは。」と問いかけた。「おっちゃん、腕は放してやってえな。お姉さんも痛そうにしてるで。」と声をかけた。
「なにくそ。」と女の腕をはなすと同時に浮浪者は汚い拳で春男の顔面を打った。そうはさせじと、春男は顔を左によせて拳をよけた。その拍子にヨロヨロと酔っぱらった浮浪者はコンクリート敷に手をついて、尻餅を食った。そのすきに女は売女がかくまった。
「やめときいな。」と春男は浮浪者に手をあげて制した。見物人は固唾を飲んでいた。
「このアホ。」といきまくと、浮浪者は腕に自信があるらしく、しゃにむに打ちかかった 春男は今度もその拳をヒョイとはずすと、浮浪者の腰のあたりをドンと蹴った。
アッと声をだしたかと思うと、キリキリと舞うようにして座り込んだ。春男は浮浪者の腕を後ろにねじ上げると、「どうや。」としぼりあげた。見物人からは、ヤンヤの拍手がわきあがった。浮浪者は酔いも覚めたのかして、ヘイコラと逃げてしまった。
誰もが恐がって浮浪者に立ち向かう者はいない。浮浪者はとうとう女を引きずって、マイクのある中心地までやってきた。浮浪者の目的は、「おれにも一曲歌わせろよ。」ということであった。しかし浮浪者はロレツがまわらないほど酔っぱらっていた。
「やめときや。」と顔見知りの売女が春男の腰のベルトを引っ張った。春男はなおも前へ行こうとした。「やめときゆうてるやろ。」と売女はベルトを持つ手に力をこめた
「そやけど。」春男は売女の顔をみた。売女は顔を左右にふった。春男は仕方なく台風の去るのを待つことにした。カラオケ仲間の連中は、下を向いて風の通りすぎるのを待っている様子であった。見物人の中にも女を救う酔狂な者は誰もいなかった。
「やっぱりあかん。」春男はそういうと、その場を飛ぶようにして浮浪者の近くまで行った。浮浪者は酔っぱらった目で春男をみると、「なんやねん、われは。」と問いかけた。「おっちゃん、腕は放してやってえな。お姉さんも痛そうにしてるで。」と声をかけた。
「なにくそ。」と女の腕をはなすと同時に浮浪者は汚い拳で春男の顔面を打った。そうはさせじと、春男は顔を左によせて拳をよけた。その拍子にヨロヨロと酔っぱらった浮浪者はコンクリート敷に手をついて、尻餅を食った。そのすきに女は売女がかくまった。
「やめときいな。」と春男は浮浪者に手をあげて制した。見物人は固唾を飲んでいた。
「このアホ。」といきまくと、浮浪者は腕に自信があるらしく、しゃにむに打ちかかった 春男は今度もその拳をヒョイとはずすと、浮浪者の腰のあたりをドンと蹴った。
アッと声をだしたかと思うと、キリキリと舞うようにして座り込んだ。春男は浮浪者の腕を後ろにねじ上げると、「どうや。」としぼりあげた。見物人からは、ヤンヤの拍手がわきあがった。浮浪者は酔いも覚めたのかして、ヘイコラと逃げてしまった。