最期のYou Got Maile
ネットに飛び込み、違った自分になり、少しばかりの優越感に浸る。それはそれで楽しかった。でも、パソコンの電源を消し、モニターの前を離れると、暗く、一人きりでいる現実が目の前に広がる。
 もうそろそろ潮時だ。何度も自分にそう言い聞かせた。でも、止める事なんてできなかった。
 そして私は、今、最低な事をしようとしている。
 ***
「結局、こうなっちゃうんだね?」
 私を見下ろしながら、あどけない表情で少年は笑った。
「三回目のデートで初めてコトに及ぶなんて普通よ」
 私は枕元の煙草に手を伸ばし、備え付けのライターで火を点けた。紫がかった煙が、天井に上って広がっていく。
「煙草なんて吸うんだ?僕も一本いい?」
 不意に煙草の箱に伸ばした彼の手を、私は軽く叩き落とす。
「君未成年でしょ?法律違反よ」
 軽くたしなめると、少年は苦虫をかみ潰したような渋面を作った。
「その未成年とこう言うコトしてるのは法律違反じゃないってわけ?」
 中学生相手に肉体関係…。確かに、未成年の喫煙を責める立場じゃないか…。でも、それを素直に認めないのが大人だ。
「なら、止める?」
 スッとベットから抜け出そうとする私を、彼の腕が遮る。体つきは小さいクセに、意外に力があり、私は押し負けて再びベットに横になった。
「はいはい。お姉さんには勝てませんよ。性少年は、性少年らしく、煙草なんて吸いません。その代わり…」
 彼の大きくないけれど、細くしなやかな手が、私の体を舐めるように這う。
 こんなコト、いつまで続けるつもりだろう?
 私は二本目の煙草に火を点けて、ぼんやり、その煙の行き先を眺めていた。
「こんなコトしてても、何も変わらないのに…」
 そう呟き、今は隣で寝てしまった少年の安らかな寝顔を見つめた。
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