最期のＹｏｕ Ｇｏｔ Ｍａｉｌｅ

元々パソコンが趣味だった彼のネット友達が、アダルトサイトの運営の話しを持ちかけてきたのだ。彼は興味本位に承諾し、そして、私も所属するアダルト系出会いサイトの運営が始まった。
「学校にも家庭にも不満はなかったけど、ちょっと自分を壊して見たくなったんですよ」
　そう言った彼の言葉に、私は自分を重ねた。
　今の自分を壊したい。誰もが思っている事。それは、ちょっとした扉を見付ける事で開かれる。
　私と彼は似ていた。年齢は凄く離れていたけれど、そんなことは関係なかった。
　そして、私は怖かった。どんどん彼に惹かれていく自分に。
　私は、もうすぐ死んでしまうのだ。
　それを彼に伝えなくてはと思った。
　最初は、死の恐怖心を忘れる為なら誰でも良かった。たまたま、彼がメールをくれたから、深い関係になっただけ。ただそれだけだった筈なのに、今は彼に惹かれている。
　私は怖かった。
　もし、彼に私の病名の事を話せば、彼は私の前から去っていくかもしれない。
　彼は若い。これから確実に死んでいく女よりも、もっといい女が世の中には沢山いる。
　おかしい事に、私は中学生相手に、捨てられるのが怖くなったのだ。
　だから言えなかった。
　でも、言わないと…。時間が経てば経つほど、お互いが苦しくなる。
　苦しく…苦しく…苦しい………。
　それは突然やって来た。よりによって、一番来て欲しくない時に。
「お姉さん？お姉さん？ねぇ、メル嬢!?」
　彼の声が、どこか遠くで聞こえる。
　ヤバイ。意識が遠退いて行くのがやけに鮮明に解る。
　まさか、これで私は死んでしまうのだろうか？彼に何も告げぬまま死んでしまうの？
　…でも、それも良いかもしれない。
　死んでしまえば全てが終わる。全てリセットできる。
　このまま、死んでしまってもいいや。
　暗い淵へ落ちていく意識の中で、私は、このまま二度と目が覚めない事を望みながら、そっと瞼を閉じた。