最期のＹｏｕ Ｇｏｔ Ｍａｉｌｅ

孤独

　目が覚めた時、私は一人だった。
　一人で、病室のベットの上にいた。
　シンと静まりかえった病室…。
　私は、まだ、生きていたのだ。
　突然の発作で、私は意識を失い、病院に運ばれた。運んでくれたのはおそらく彼であろう。
　でも、今、その彼はこの場所にいない。
　答えは簡単だ。医師から、私の病名を聞かされたに違いない。あの状況なら、彼は私の弟と言って通るだろう。
　そして、彼はいない。
　こうなることは解ってた。別に悲しくなんかない。死の宣告を受けたあの日、私の心は決まっていた。　
　人間、死ぬ時は一人だ。
　だから、せめてそれまでの間だけでも、誰かと一緒にいたかった。
　それは私のエゴだ。ワガママだ。
　そんな事も解っていた。
　私は寂しい人間ではない。
　ただ、ちょっとだけ、不器用なだけだ。
　一人きりの病室は、物音一つせず、とても静かだった。
　とても、とても静かだった。
　知らなかった。静けさが、こんなに痛いなんて。
　それは肉体的な苦痛ではない。心を直接針で刺される痛さだ。
　この病室には、目に見えない透明な針が沢山あって、それらが私の体を串刺しにしている。
　ふと、そんな気がした。
　ポタポタ…。
　なんだろう？悲しくもないのに、涙がでる。
　嫌だ。何で涙なんか出てくるんだろう？
　怖い。怖くて溜まらない。
　死ぬのが怖いんじゃない。
　私が孤独であると、突き付ける静寂が怖かった。
　私は一人なのだ。誰も私の事など気にしない。生きていても、死んでいても、どちらでも変わらない。
　その事実が怖かった。
　頭では理解していたのに…。とっくの昔に受け入れていたのに…。
　寒くもないのに、体が震える。
　私は自分自身を抱きしめた。