最期のYou Got Maile
別れ
「メ~ル嬢~。起きた?」
出し抜けに明るい声が、一人、病室のベットの上で泣いていた私の鼓膜を打った。
私は驚きで言葉を失い、何度となく彼の顔を見返した。
「聞いたよ~。メル嬢死ぬんだって?」
子供は素直なぶん、残酷だ。大人ならためらわれるような言葉も平気で口にする。
「そんな死人みたいな顔しないでよ」
『みたい』ではなく死人なのだ。
人は生まれた時から死に向かって歩き続ける。人は必ず死ぬ。唯一それが、神から人に与えられた平等な未来だ。
それでも目前に迫っている『死』を意識しなければ、人生は結構楽しいものだ。しかし、一度『死』に頬を舐められた人間は日常すら恐怖の対象になりうる。
「君は天国ってあると思う?」
唐突な私の質問に、彼は肩をすくめて答えた。
「あいにくと、僕は現実主義者なんだ。科学って神様は天国の存在を認めてないしね」
私も神様なんて信じてない。目に見えない物なんて信じられない。それは私も同じだった。
死んだら何も無い『無』になる。ただそれだけだ。
「僕はね、メル嬢。死後の世界って、生きている僕達にこそ必要な世界なんじゃないかって思うんだ」
彼は、ベットに肘をつくと、血の気が失せ、体温が奪われた私の手を両手で握った。
「僕達は生まれた時から、死ぬ運命を押しつけられている。それは、もしかしたら、神様ってやつの仕業なのかもしれない。でも、科学的には、僕達が理解できる上では、死んじゃったら何も残らない。『無』になっちゃうんだ。それが僕達は怖いから、つい、死後の世界ってやつにすがっちゃう」
彼の言う通りかもしれない。死後の世界って奴は、生きているからこそ必要なのだ。私は今、自分が無くなってしまう事が怖い。
「だからさ、誰かの心の中にその人がいれば、それは『無』という意味の死ではなくなると思うんだ。例えメル嬢が死んじゃっても、メル嬢は僕の心からは消えないと思うよ。一生生き続けると思う。なんたって、初恋の人だからね。メル嬢は」
出し抜けに明るい声が、一人、病室のベットの上で泣いていた私の鼓膜を打った。
私は驚きで言葉を失い、何度となく彼の顔を見返した。
「聞いたよ~。メル嬢死ぬんだって?」
子供は素直なぶん、残酷だ。大人ならためらわれるような言葉も平気で口にする。
「そんな死人みたいな顔しないでよ」
『みたい』ではなく死人なのだ。
人は生まれた時から死に向かって歩き続ける。人は必ず死ぬ。唯一それが、神から人に与えられた平等な未来だ。
それでも目前に迫っている『死』を意識しなければ、人生は結構楽しいものだ。しかし、一度『死』に頬を舐められた人間は日常すら恐怖の対象になりうる。
「君は天国ってあると思う?」
唐突な私の質問に、彼は肩をすくめて答えた。
「あいにくと、僕は現実主義者なんだ。科学って神様は天国の存在を認めてないしね」
私も神様なんて信じてない。目に見えない物なんて信じられない。それは私も同じだった。
死んだら何も無い『無』になる。ただそれだけだ。
「僕はね、メル嬢。死後の世界って、生きている僕達にこそ必要な世界なんじゃないかって思うんだ」
彼は、ベットに肘をつくと、血の気が失せ、体温が奪われた私の手を両手で握った。
「僕達は生まれた時から、死ぬ運命を押しつけられている。それは、もしかしたら、神様ってやつの仕業なのかもしれない。でも、科学的には、僕達が理解できる上では、死んじゃったら何も残らない。『無』になっちゃうんだ。それが僕達は怖いから、つい、死後の世界ってやつにすがっちゃう」
彼の言う通りかもしれない。死後の世界って奴は、生きているからこそ必要なのだ。私は今、自分が無くなってしまう事が怖い。
「だからさ、誰かの心の中にその人がいれば、それは『無』という意味の死ではなくなると思うんだ。例えメル嬢が死んじゃっても、メル嬢は僕の心からは消えないと思うよ。一生生き続けると思う。なんたって、初恋の人だからね。メル嬢は」