最期のYou Got Maile
カタカタカタ…。
 全ての文字を打ち終え、エンターキーを叩くと、準備は完了した。もう、思い残す事はない。
 私は、深く息を吐き、一人きりの狭い部屋をグルリと見渡した。
 今、私は一人だ。これでいい。これで良かった。
 私は満足げに、一人でこの部屋にいる事に笑みを浮かべた。
***
 運命はいつも突然目の前に立ちはだかる。それは私にも例外ではなく、突如としてやってきた。
 最初は、会社で実施された健康診断からだった。再検査の通告を受け、大きな病院の精密検査を受けた。そして、改めて検査報告を聞きに診察室へ行くと、沢山のレントゲンに囲まれながら、一人の医師が口をへの字に曲げて、診察室に入ってきた私を椅子に座りながら見上げた。
 私はピンときた。「何かあるな」。その想いは的中した。しかも、もっとも最悪なパターンとして。
「あなたの病気は、『多型膠芽腫』と考えられます」
 医師のその言葉に、私は意識が遠くなるのを感じた。
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