最期のＹｏｕ Ｇｏｔ Ｍａｉｌｅ

「勘違いしないで。私は死なないわ。一週間後、入院するの」
　私が入院すると言うと、彼はひどく驚いた顔をした後、何かを悟ったように急に明るい表情になった。
「それじゃ、手術を受けてくれるんだね!?」
　私は小さく頷いた。
「だから、君は自分の家に帰りなさい。そして、待ってて欲しいの。必ず、会いに行くから…。それとも、私が相手じゃ嫌かしら？」
　彼は嬉しそうに笑顔を作ったまま、私の問いに首を振ると、ホッと息をついた。
「よかった！約束だよ。必ず良くなって、帰って来てよ！そしたら…そしたら、結婚しよう！」
　彼の唐突なプロポーズに、私は思わず噴き出してしまった。
「なんで笑うのさ？」
　そんな私に不服げに頬を膨らます彼が可愛くて、私は彼に唇を重ねた。
「男の子は１８歳以下じゃ結婚できないの」
　それが現実というやつだ。
　私の言葉に、彼は不服げだったが、すぐに笑顔を作った。
「なら、次はメル嬢が待ってよ。僕が１８になるまで。幸い、お金ならあるしね」
　そして悪戯っぽく笑う彼が愛おしくて、私達は再び唇を重ねた。
「今日は泊まっていきなさい。お姉さんが遊んであげるわ。でも、明日には帰るのよ。それが条件。良いわね？」
　彼はこの条件を不服としたが、取り敢えず、目先の誘惑と、未来の希望を夢見て、条件を承諾した。
＊＊＊
　カタ…カタカタ…
　キーボードを打つ指が重い。
「何やってんの？」
　寝ぼけ眼を擦りながら、一人パソコンに向かっている私を、彼が怪訝な表情で尋ねる。
　私は作成途中だった画面を消し、彼に振り返り、笑顔を見せた。
「何でもない。それより、今日はもうお終い？若いのに、体力ないのね？」
　若い性少年が、この手の挑発に乗らないわけがない。
　私達は再び強く抱きしめ合い、互いの存在を確かめ合った。