最期のYou Got Maile
最期のYouGotMaile
『このメールを読んでいる時、君はきっと怒っている事と思います。
 私は、物凄く身勝手な人間です。だから、憎んでくれるなら、憎んでくれて結構です。忘れるなら、忘れてください。そうなることを私は望んでいます。
 でも、最後に一言だけ、ワガママな女のエゴに付き合ってください。
 
  私の墓の前に、立たないでください。
  そこに、私はいません。
  私の墓の前で、泣かないでください。
  それを、私は望みません。
  
  私は、春を流れるせせらぎとなり
   あなたの喉を潤し
     夏の木漏れ日となり
   あなたと戯れ
     秋のそよ風となり
   あなたに囁きかけ
     冬に降る雪になり
   あなたを包み込みます
  
だから、私の墓の前に立たないでください。
    涙を流さないでください。
そこに、私は眠ってなどいないのだから。
    あなたが私を想う限り、
    私は死んでなどいません。』

 そこは、見晴らしの良い、海が見渡せる丘の上だった。
 カトリック教徒だった彼女は、この場所に自分の墓を建てた。
 確かに僕は怒っていた。
 でも、それは彼女が僕との約束を守らなかったからというわけではない。
 約束の話しをするならば、彼女は守ったと言える。
 彼女に待つようにと言われて一ヶ月が過ぎたある日、突然、僕のパソコンに、彼女からメールが送られてきた。僕は、てっきり彼女の病気が良くなったのだと思って喜んだが、それは違っていた。
 メールはグリーティング機能で送られてきたものだ。作成日は、一ヶ月前、僕と彼女が別れた直後だ。
 形はどうあれ、彼女はメールという形を通して、再び僕に会いに来てくれた。だから、約束を破ったとは言わない。
 彼女が入院すると言ったのも、嘘ではなかった。ただし、僕が期待した延命の手術のためではなく、死ぬための入院だった。
 そんな事も知らずに大喜びした僕が馬鹿みたいに思えた。
 
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