*Tiara*〜天使の君〜
「アイル!!」

シリウスは女官長の名を呼んだ


シリウスの急かすような声に女官長アイルは、駆け寄ってきた


「シリウス様、お帰りなさいませ。」


女官長は50歳ほどにみえ、いかにもベテランといった風だ


アイルはシリウスが赤ん坊の時からアルバン国の女官として働いている



「アイル。この娘に新しい部屋を用意し、侍医に診せるのだ。この娘はルナ川の河原に倒れていたのを助けた。」


アイルはシリウスの腕の中にいる小さな少女を見て、すこし驚くような表情をみせたが、すぐにシリウスに視線を戻した


「かしこまりましたシリウス様。では娘を運ばせましょう。」


シリウスは近づいてきた侍女に少女を渡そうと一瞬近づいたが、その手をすぐにとめた


なぜだ?この気持ちはなんなんだ。


シリウスはその時、なぜだかこの少女を手放したくはないと感じていた


「いや、やはり私が運ぼう」


シリウスがそういうと、アイルはさらに驚いたようだった


「は、はい…。シリウス様がお疲れでなければそれでもよいですが…」



シリウスはその言葉もほとんど聞かず、少女を運んでいった
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