舞Days~4月。始まりを告げるBomb~
車中では雪乃塚さんと隣だった。
「どうして桜宮院家に行くのに,雪乃塚家の車なの?」
「皆様苺果のお家の車がお嫌なのです。…多分。」
「何で?」
「苺果のお家の車は,ピンクのリムジンで,何故か大きなクリ-ムと苺の飾り物が乗っていて,内装もレ-スやリボン,フリルがふんだんにあしらわれているのですわ。」
「成る程。」
それに比べれば雪乃塚さんの車は普通だ。真っ白のリムジンに,金色で雪の結晶のような家紋がペイントされている。
でもまぁ十分人目はひくだろう。
「でも…」
雪乃塚さんは少し優しい顔で呟いた。
「一番の理由は,私と苺果がなかよしだからかもしれないですわ。」
私はそんな彼女を見て少し笑顔になった。雪乃塚さんは転じて笑みに悪戯っぽい 感じを含ませると,
「苺果,まだ貴女と話せてないでしょう?」
「あ…そういえば」
「苺果は少し人見知りなのですわ。あのこ自分の見た目に軽いコンプレックスがあって…。そのうち慣れると思うので,そっとしてあげて下さいな。」
そっかぁ…あんな可愛い子にコンプレックス…きっと複雑な事情があるんだな…
「わかった。ありがとう,雪乃塚さん。」
「春海。」
「え?」
「…と呼んで下さる?」
雪乃塚さんは顔を赤くして俯きつつ言った。
「もちろん。ありがとう,春海。」
「ありがとう,梓。」
二人でお互いニッコリ笑うと,車が目的地に着いたようで,停車した。