せぴあなタメ息

彼は、

その声で、

しっとりとした心地の良い空気で、

ゆっくりとホール中の空気を染め替えていく。




あの人が、

さっきすぐそばにいた人なのか。



そう思うと、

信じられない気がした。

テレビ画面の向こう側にいるみたい。

確かに存在しているのに、

遠すぎて、

リアルな人に感じられない。

類は、そんな感覚に陥ってしまった。

 


駄目だ。
 
あたしの心臓は永遠に報われない。






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