それは初恋で、


まず、扉を開けるのが怖かった。
注目を避けては通れない。
扉を開ける前から、私のアガリ症はピークに達しようとしていた。

そろりと、扉に手をかける。



「おぉ、藤沢!」

「す、すみませ…」

「どうした、珍しいな」

「あ、…途中、じ、自転車が壊れて…」

「そりゃ、災難だったな」



その時、
私の後ろから、もう1人の遅刻者が私と先生の前を横切る。




「こら、相沢春樹!」

「あ、バレた?」

「お前コレで遅刻何度目だ!」

「まだ10回いってないだろ?」

「11回目だ! 馬鹿者」

「お前、反省文提出な」

「嘘だろ!?」

「嘘じゃない」

「何で!! 藤沢は?」

「藤沢は遅刻初めて。お前は11回目だ、当然だろ」

「藤沢だって遅刻は遅刻じゃん」

「なら、藤沢にはお前の見張りをしてもらう。お前はすっぽかしかねないからな。相沢が書いた反省文を藤沢が提出しに来い。いいな? それじゃ、2人とも席着け」




…彼はクラスの人気者の相沢くん。



相沢くんのおかげで私から視線がそれたと思いきや、とんでもない事態に。

普通の地味な高校生活を送るためにはきっと、
こういうタイプの人とは関わらない方が身のため。

何だか今日はツイてない。




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