それは初恋で、
屋上へ向かう踊場で叶くんは止まった。
「……」
問い詰められるかと思えば、叶くんは何も発しない。
屋上の扉にただもたれて座るだけ。
無言のプレッシャーが押し迫る。
私の言葉を待っている…?
「あ、あの…」
私は叶くんに声を掛けるほかなかった。
「何?」
「えっと…戻ろうよ…?」
「ダメ」
勇気を出して言ってみたけれど、拒否られた。
「え、どうして…」
「分かんないの?」
「いえ、何となくは…」
「言う気になった? 言うまで帰さないから」
「で、でも授業…」
「…」
「はい…」
私が何か隠していることは叶くんに完全にバレてしまっている。
一人でこれを抱えるのも正直つらい。でも、あまり見せたくもない。
どうしよう…
「ん?」
私は迷いながらも、ゆっくり鞄から封筒を取り出して叶くんに渡した。