それは初恋で、
#2 夢×現実
「ただいま」
ウチは母子家庭で、たいてい帰るといつも1人。
今日は少し、遅くなったから…
「おかえり。遅かったのね」
「うん、ちょっと…」
「な~に? 何か良いことでもあった?」
「え、」
「顔に書いてある」
私は両手で頬を押さえた。
「…うん、」
「そ。良かったわね」
お母さんは、いつも深く突っ込まない。
私が話すことは、何でも聞いてくれる。けれど、私が話さないことは何も聞かない。
何も知らない。
だから、私の闇に呑まれた中学時代も。
お母さんが帰ってくるまでには傷も汚れも片付けて、平然を装っていたから。
やっぱり、仕事で大変なお母さんに、心配掛けられないし…
どんなに辛くても、言わなかった。
辛い日ほど、必死で…明るく振る舞おうとしてた。