メガネで無口な王子様
ぐいっと引っ張られる左腕。 



右腕を掴まられる感触はもうなかった。




「……ちょ……波多野くんっ
…痛いっ……」





あまりの強さに痛みを感じる左腕。 



でも私の言葉を無視して強引に保健室につれてこられた。 





すっと差し出される体温計。




「…計って待ってろ。
先生呼んでくるから」




メガネを付けてないときみたいな口調の波多野くんにびっくりしながら体温計を脇に挟む。




すぐに波多野くんは保健室から出ていった。 





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ピピピピッ 


体温は、37.6。






微熱もいいとこだ……。 






ガララッ





ドアを開けて入って来たのは波多野くん。 





「先生遅刻だってよ……
20分ぐらいしたら来るから待ってろだって……。」

「……あ……うん…。」




…この学校の保健の先生はやる気があるのだろうか……。 






「……何度…??」





波多野くんはメガネを外しながら尋ねてきた。





「…ぇえーっと…………さんじゅー」コツンっ 







波多野くんは私のおでこに自分のおでこをくっつけた。







‥‥‥‥とくん‥‥‥‥





ちっ………近いよ……。 






「………微熱ってとこだな。」 


「………そう…みたい…。」

「………一応寝とけ。」






そう言って私をベットまで誘導した。 





「……ありがとう。」






私はベッドの中に入った。





「………なぁ……」




凄く小さな声で言う波多野くん。



「………な……何……??」
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