メガネで無口な王子様
「びっ………びっくりしたぁ…
杏里ちゃんって周り見えない??」
笑いながら私に言う悠斗くんはいつになくご機嫌だ。
「みっ……見えてるよ…
なんとなくあの場で言いたかったからかな…。」
ちょっとした嘘…。
でも本当。
波多野くん………
私のこと嫌いになっちゃったかな……。
しょうがないよね…。
私が悪いんだから。
「杏里ちゃん…………
手、つないでもいい??」
悠斗くんが顔を赤くしながら、でも真剣に訪ねる。
私の前には差し出された手。
これを握ったら、後戻り出来ない気がした。
もうきっと………
波多野くんのところに戻れない気がした。
「…………杏里ちゃん……??」
でも…………
もう戻っちゃいけないんだ。
「………ごめんっ…!!
いーよ♪」
きゅっ
私は悠斗くんの手を握る。
もう戻れない。
戻っちゃいけない。
…………これで…………
いいのかな…。
いいんだよね?