メロディが恋しい言葉達
1
「やっと…始まったか」

暗く狭く、汚い部室の中で、

1人来客用のソファにどかっと腰を降ろした香坂は、右手に持つコーヒーカップから流れる湯気を、

異様に長い睫毛の下の瞳で、冷ややかに見つめながら独り呟いた。

そんな時の香坂の横顔を見ると、時代劇に出てくる美少年剣士のような凛々しさがわかった。

まあ〜一歩間違うと、危ないけど。

「そうですね。もう長いこと、音沙汰がありやせんでしたからね」

中西がうん、うんと頷いた。

「こいつ…才能ないくせに、いろいろ書いてますからねえ。忙しいんでしょ」

一応表面だけでも、同情して見せる河野輝。

「仕方ないんじゃないの。こいつに、才能がないんだから。見てよ。こいつの話、野いちごで浮いてるし」

みどりは、容赦なしにしゃあしゃあと言う。


「そこまで、言うこともあるまいて。再び活字の世界に戻ってこれたんだから…。それでよしにしょうじゃないか」

と制するように言うと、香坂はソファから立ち上がり、正面(?)を向いた。

「と言うわけで、皆さん。お久しぶりです。初めての方は、よろしくお願いします」

香坂は頭を下げ、

「今回の事件は、1人の女生徒の依頼から、始まりました。その時、我々にもたらされた一枚の写真が、引き金になり…」

そこまで言って、香坂はフッと笑い、

「野暮でしたね」

頭を下げ、改めて、読者のみんなに言った。

「それでは、学園情報倶楽部をお楽しみ下さい」


「お楽しみくださああああい!」

唐突にキーンと響く、女の子の声がした。




「誰だ?今のは」

「さあ」

中西と輝は、頭を抱えた。


「では、始まります」

< 59 / 59 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

記憶『短編』

総文字数/5,066

ミステリー・サスペンス9ページ

表紙を見る
天空のエトランゼ〜花のように美しく儚い炎

総文字数/1,300

ファンタジー2ページ

表紙を見る
ティアドール

総文字数/53,160

ファンタジー77ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop