ふたり
24時間で精子を受け入れる能力を失う卵子
その卵子を目指して10時間かけて旅をする精子
「壮大な旅の末に奇跡が起きるんだね柊ちゃん」
私はお腹の上の柊ちゃんの手に
自分の手を重ねる
「応援しなきゃ、みんな頑張って~って」
私が そう笑うと
「そうだね」
柊ちゃんが うなずく
「柊ちゃん、ありがとう」
「ん?」
「柊ちゃんが今、教えてくれたから
今回、妊娠しなくてもがっかりしないもん」
ぎゅって
柊ちゃんに抱きつく
「でもね、なるべく早く奇跡が起きてほしいなぁ」
柊ちゃんは
私の髪を優しく撫でる
……気持ちいいなぁ
柊ちゃんの胸に鼻を押し付けて
目を閉じた
「私が赤ちゃん産んだら……
柊ちゃんのお父さんとお母さんも喜んでくれるよね?」
「…………結、それは…」
「ずっと、このままは良くないよ柊ちゃん」