ふたり
動物園には観覧車があって
帰りに乗ることにした
観覧車の窓に おでこをつけ
だんだん遠ざかる地上を
じっと結は見つめてた
「楽しかったかい?」
そう訊くと
結は笑顔でオレを見て
「うん!」
元気よく うなずいた
夕暮れに染まる茜色の空を見て
…………そっか、そうなんだ
オレと結は
夫婦で
恋人で
親友で
親子で
兄妹で
オレにとって結は
結にとってオレは
全てなんだ
だから、幸せなんだな オレ
「結」
「なぁに?」
「キスしよっか?」
目を見開き、恥ずかしそうに
結は唇をとがらせ
「………うん」
………可愛い
すごく すごく愛しいオレの全て
立ち上がり結の隣に移動すると
ゴンドラが少し揺れた
うつむいて 目を伏せた結の
温かい頬に手のひらを添えて
ちょうど てっぺんに着いた時に
小さな結にキスをした
柔らかい唇が重なると
胸が甘く震えた
そのまま ギュッと抱きしめると
「ありがとう、柊ちゃん」
震える結の声が聞こえて
結が顔を埋めた
オレの胸は濡れていた