ふたり



オレは すっかり混乱して



「座ってください」


田所先生の言葉に


ストンと座った



結が なんで?


なんのために 死んだなんて





「結は……生きてますよね?」



「えぇ。もちろん」



あぁ………
良かった



テーブルにひじをつき
頭を 抱えると




「結さんには、全て内密でと言われてましたが……

そういう訳にはいきませんから

私と結さんが交わした約束を
今日、藤代さんにお話しようと」




約束?




「夏でした

結さんが病院を抜け出した日」



あ………あの雨の夜


結が
もう治療をやめると言った夜




「次の日に結さんは私の元を訪れて、治療をやめると言いました」



次の日に?
結が病院へ…………

全然 知らない


だって オレが退院の手続きの一切をやったんだぞ?





「治らないなら、自分は1秒でも長く夫のそばで妻として生きるのだと」



……………結



「ただ治療をやめたら田所先生は困りますよね?とも言いました」



「え?」



「私は彼女の奇病について研究がしたかった

彼女はそれを知っていた」



田所先生は ギュッと眉を寄せ
視線を床に落とした


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