ふたり



教えてもらった病室に入ると



ベッドに
ちょこんと座ってた結が



「しゅ、柊ちゃんっ!?なんで…」



「なんでじゃないよ、結」



ベッドに座る結の前に立ち
ツンッて人差し指で
おでこを 突っついた


「帰るぞ」



そう声をかけると



オレが突っついたおでこに手を当てて




「田所先生に聞いたの?」



「ああ」



「あたし、帰らないよ」



「どうして?」



「もう、お別れしよう。柊ちゃん
あたしね、これ以上、柊ちゃんのそばにいたら…哀しい思い出残すから」




「結………」




「話すことも出来なくなる

歩くことも出来なくなる

柊ちゃんの奥さんじゃなくなって行く

これからは失って行く思い出しか残せないよ

そんな あたしの世話を
柊ちゃんに…させたくないよぉ」



ひっく ひっく
結は小さな肩を上下させ
泣き出してしまった



「ど、動物園の……楽しい思い出を………最後に…して……お別れしよう、柊ちゃん」




結は気がついてないのかな?



キミは どんなに姿を変えても



いつだって 結だったよ?



可愛くて 優しくて


だけど芯が強くて



肝心なところは誰にも頼らない



1人よがりなところも



いつだってキミは結だった



世界でたった1人



オレの愛しい妻だった




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