【旧】モノクローム


「どういう意味……?」


私は眉に皺を寄せて訊ねた。


まともな返事など返ってこないなんてこと、なんとなくわかってしまっているけど、いつの間にか私の口からこぼれ落ちていた。


「そのままの意味だよ」


「……体にってこと?」


「わかってないな」


仕方なしに彼は笑った。


「全部だよ」


微笑んでいるはずの彼の目が真剣で、思わず返す言葉も見つからなかった。


すると、ちょうど講義終了を知らせるチャイムが室内いっぱいに響き渡った。


ガタガタと学生たちは席を立ち上がり講義室を出ていく。


彼が一緒に入ってきたグループも談笑しながら席を立ち上がったのが見えた。

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