【旧】モノクローム
彼もそれを見て、バッグを手にとった。
やっと彼から解放される、と思った矢先。
彼は、言った。
「またね、葉月(ハヅキ)ちゃん」
「……っ! どうしてその名前……」
彼はまた、自分が一枚上手だと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「『どうして』? 君の名前だろう?」
「なんで知ってるの……」
声はだんだんと小さくなる。
私は手をぎゅっと握り、カタカタと震わせた。
すると、彼は私の声が聞こえていないように言った。
「俺は水谷 碧(ミズタニ アオ)。碧でいいよ」