【旧】モノクローム


碧、と彼を呼ぶ声が聞こえ、彼は「じゃあね」と言い残して向こうのグループの方へ帰っていった。


何が、一緒にいてあげようか? よ。


結局向こうに戻るんじゃない。


そう考えてやめた。


きっと彼は私をからかっただけ。


深い意味なんてない。


だけど、どうして私の名前を知っていたのだろう。


大学に入り1年くらい経つが、そのときから私の名前を自分から名乗ったことはない。


私に声を掛けてくる男はみんな、私のことを「ハヅ」と呼んだ。


葉月だからハヅ。


そんな単純なことなのに、男は気づきもせず私の名前がハヅだと信じきっていた。

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