【旧】モノクローム
∵
男と付き合うことは、始めてではない。
だけど、今までに付き合った男もそう多くない。
大抵は『遊び』で終わってしまうから、「付き合う」なんてあまり考えることがなかった。
「おはよう、葉月ちゃん」
大学の講義が始まる前に、彼はこの前のように私の隣に座り、馴れ馴れしく話しかけてきた。
「……」
「あれ、シカト?」
彼はそれこそ面白いのか、くすくすと私の隣で笑い始めた。
「……何が面白いのよ」
「あ、やっと話した」
「からかってるの、水谷くん」
「名前、覚えててくれたんだ。っていうかさ、『碧』でいいよ、名前」
本当、気に障る。