【旧】モノクローム


言われるよりも早く、暗闇の中に人影があることに気づいていた。


「もうちょっと早く来るかと思ってた」


そう言って彼はすくっと立ち上がり、私に白い私の携帯を差し出した。


「これでしょ?」


「……」


私は無言でぶっきら棒にその携帯を受け取ると、そのまま背を向けてもと来た道を帰ろうとした。


が、それはあっさりと彼に引き止められる。


彼が私の腕を掴んだのだ。


「……離して」


暗闇の中でよく相手の顔も見えないけど、私はそんな相手をきっと睨みつけた。


「水谷くんに構われるようなこと私、したかしら?」


「そう拗ねないでよ。それに碧でいいって言ってるのに」


「だから! 構わないでって言ってるの!」

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