【旧】モノクローム
 

私は声を荒げ、振り返り際に彼の腕を振り払った。


そんな私に彼は驚いたようで、呆然と私を見ていた。


「こんなに人を不愉快にして楽しい? ……馬鹿にしないで」


そう言う私に、彼はふっと笑った。


「不愉快? そうしてるのは誰だと思ってんの?」


「あなたに決まってる……」


でしょう?


そう続けようとしたとき、彼の人差し指が私の口元に添えられ、つい口をつぐむ。


「本当にそうかな? そうしてるのはもしかしたら、君なのかもしれないよ」


「私……?」


「したくもないことをして、言いたくもないことを言って……。君を見てると痛々しいね」


「痛々、しい……?」


そう真っ直ぐに私を責めてくる言葉に、体の力が抜けていく。




私、痛々しい?


私、したくもないことしてるの?
私、言いたくもないこと言ってるの?


ふっと足に力が入らなくなって思わずその場にしゃがみこむ。

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