【旧】モノクローム
Chapter 1
∵
「ハジメマシテ、ハヅちゃん」
後ろから2番目か3番目の列で講義を受けている私に声をかけてくる見知らぬ男。
こんなこともすっかり慣れてしまったこの頃。
私は講義に集中しているふりをして、その男の言葉を聞き流す。
すると男はさらに調子を上げて私に言う。
「シカトはないんじゃない? ねえ、オトモダチになろうよ」
馬鹿馬鹿しい、という思いを心の中にねじ伏せて私は男の方を向き、微笑んだ。
「どういう意味?」
「どういう意味って、わかってるんでしょ?」
そう聞き返す男を見て、私はふっと笑った。
「そうね」