【旧】モノクローム
彼女ははっと気づいたように顔を上げて、おずおずと言葉を紡いだ。
「柳……美優、です……」
全員が自己紹介を終えたところで碧が口を開いた。
「自己紹介も終わったことだし、このあとみんなでカラオケ行かね? この間、すっぽかしたし」
「さんせーい! 最近あたしストレス溜まっちゃって、もうそろそろ発散したかったころなんだよね」
「彼氏か」
「そ! この間アイツが他の女と歩いてるところ見ちゃって、そのこと問い詰めたら何て言ったと思う? 友達だって、友達! 普通、友達と手繋ぐかっての!」
真っ先に賛成した北山さんは野口くんが突っ込むとその彼氏のことを一気に話す。
その話を聞いて、みんなが笑っているなかで私ひとりだけが無表情のままだった。
そして、自然と私は呟いた。
「……くだらない」
その言葉に、一瞬にして周りが氷りつく。
そんな気まずい雰囲気の中で、恐る恐る野口くんが口を開く。
「あ、あのさ、ちょっとそれは……」
「……別れればいいじゃない」
その私の言葉で再び周りは口を閉ざす。