【旧】モノクローム
私は席を立って、そのままそのテーブルから離れた。
背を向けて、歩き出したところで後ろからこえがする。
「待てよ、」
別に怒っているようでも、悲しんでいるようでもない碧の声。
その声に私は振り向くこともせず、大学内を出ることだけを考えた。
だけど、後ろの方からせわしない足音が聞こえる。
想像しなくてもわかる。
このパターンは、もうわかりきっている。
だから、腕を掴まれる前にくるりと後ろを振り返った。
「もう腕は掴ませないから」
そう言って、私は腕を組む。
「そう。それよりも、カラオケ、行かない?」
どこまでこの男はお節介なんだ、と思った。
私はじっと彼を睨み、話を逸らした。
「碧も北山さんに言ってあげればよかったのに。そんな奴となんて早く別れればいいのに、って」
そう言う私に碧はふっと笑う。
「葉月はわかんないの? 北山がそう簡単に彼氏と別れるなんてできないこと」