【旧】モノクローム
この男は照れもしないのか。そんな台詞を吐くのに。
「……」
「わかった?」
「……ううん」
「じゃあ、わかんなくていいよ」
碧は穏やかな笑顔を崩さずに言った。
「それよりも、カラオケ行かねえの?」
「行かない」
私は即答した。
碧はつまらなさそうに、「うーん」と少し考えてから、何か思いついたように言った。
「じゃあ、俺とカラオケ行くのは?」
ふっと私は鼻で笑ってから、答えた。
「絶対、お断り」
厳しいな、と言って碧は笑った。
人が多く行き交う大学のホールで私たちを周りがどう思うかは、わからない。
多分、周りから見ると私たちの会話はおかしいのだろうけど。
確かに。
そう、確かに。
心が軽くなっていくのを私は感じた。