【旧】モノクローム
 

私は、心の中でそっと呟いた。


もう、私は変われない――。


「朝までここで寝よっか」


「汚いよ」


「いいじゃん。汚れても洗えばいいんだよ」


碧の何気ない言葉ひとつひとつに私は振り回される。


彼のとなりに寝転がってみる。


今日は月も出ていて、星も良く見えた。


みんな見える世界は一緒なのに、どうしてこんなにも思うことが違うんだろう。


「ねえ、空……」


聞こえないことを覚悟で小さな声で言ってみた。


だけど、碧はちゃんとその声を聞き取っていて。


「うん。綺麗だね」


「……」


ほら、全然違う。


この空を見るたびに、世界に取り残されるような気分になる。


つまりね、寂しいねってことだよ。




洋服は洗えるけれど、洗えないものはどうすればいいですか?

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