【旧】モノクローム
 

――




人のいない細い廊下に出て、足を止める。


胸の動悸が治まるのを待って、辺りを見る。


ここはどこだっけ、と思って自分は人のいないところを探すのが得意なのかもしれないと内心笑う。


それから、これからどうしようと考える。


本当は受けなければいけない講義だったけれど、今更戻る気になれない。


次私が受ける講義まで、まだ時間がある。


とりあえず人が集まる場所まで出てから考えようと歩き始めたとき、前方から人が歩いてくる。


「……白瀬さん?」


背の高い、すらりとした男性。


見たことある、誰だったっけと名前を思い出そうとしたところで、はっと気づく。


「ここで何してんの」


「青木くんこそ……」


苦笑いしか出てこなかった。


彼は至ってクールだった。表情をあまり大きく変えることはない。

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