【旧】モノクローム
「俺は研究室に行くところだったけど」
淡々と彼は答え、私の返事を待った。
返事を待つ必要はないのに、と思ったが私の答えに彼にとっての意味はないと思って適当に言った。
「図書館にちょっと調べ物」
へえ、と彼は興味なさ気に言った。
じゃあ、と私は言ってそのまま彼の横を通り抜けようとしたが彼の言葉に足が止まる。
「誰とでも相手できるって本当?」
「……え?」
どういうことだ、と思わなくてもわかる。
彼もそうだったのか、と理解する。
碧とつるんでいるから、私にはこういうことを言われないとどこかで判断していた。
が、その判断も間違いだったと気づかされる。
「その線の奴らならみんな知ってる。誰とでも寝るって」
「……そう」
確かにそうかもね、と嘲笑う。
「相手してよ、俺と」
心がまたひとつ分、なくなった気がした。