【旧】モノクローム
 

もう夜の9時か。


携帯を見ながら、そんなことを思う。


晩ご飯も何も食べていないが、あまり食欲もない。


このまま電車に乗って帰ろう、と思っていたとき、頭の中をふっと何かがよぎった。


今年は……きっと。


その思いを捨てきれずに私は自分の家のひとつ前の駅で降りた。


家に帰る頃にはいったい何時になっているだろう?


人通りも少なく暗い夜道をひとりで歩いているというのに、私の頭に『恐い』という想いはなかった。


きっと12時を超えるだろうな……


そう思いながら、何度も歩いた道を踏みしめる。

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