【旧】モノクローム


しばらく歩くと、大分暗い中に慣れてきた瞳に草原と穏やかに流れる川が見えた。


やっぱり、今年も……


そんなことを思いながら、私は草原に腰を下ろす。


灯りは空にある月だけ。


それだけで充分だ。


この場所を見て、誰が昔ここは花畑だったとわかるだろう?


春になれば、色とりどりの花が咲き乱れる。


懐かしくて、残酷な場所だった。


ここ最近はすっかり花も咲かなくなって、それと同時に人も寄らなくなっていった。


「……悲しいね」


そう、ぽつりと呟いてみる。

< 9 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop