神様、私をデブにしてくれて、ありがとう。
神様、私をデブにしてくれて、ありがとう。
50、60、70……
私の体の重みで、体重計の針の下を静かにまわっていく数字。
くるくるくるくる、勢いをつけてよくまわる。
85を指したあたりでやっと針が止まる。
『はちじゅう、ご』
クスクス…
あぁもう。
こんなの公開処刑だよ。
大学の体重測定なんてさ、いい加減だから。
男も女もごちゃまぜにされて、みんなが見守る中体重計に乗って、その上結果を口に出される。
『わざわざ口に出す意味、ある?!デブだって、みりゃ分かるでしょ!ほんとに配慮が足りないんだよ、この大学はー!!』
大学に入って、一番の友達になったメグ。明るくて、頼りになって、誰よりも友達思いで。一緒にいると元気をくれる、大好きな女の子。
「メグ、65キロでしょ?別にデブってほどデブじゃないからいいじゃない。私なんてほんと、消えてなくなりたかったよ」
私、西條百合華(さいじょうゆりか)。19歳。
気が付いた時にはもうデブだった。
というか、自分がデブだって自覚したのがかなり遅かった。
−私って、みんなとちょっと違う?
うっすら気になりはじめた中学生の頃、すでに私の体重はまわりの女の子達からは軽く20kgはオーバーしてただろう。
だから、デブが当たり前になってて。
デブじゃない私なんて、想像もつかない。