忘却心 第一幕 月下章
クスクスと笑い声が聞こえたかと思うと先ほどより大きな波紋が現われ、中から朱いマントを身につけた者が2人出てきた。
「やだなぁ~、やっぱり見つかっちゃったかぁ。って、今日はやけに人数少ないね。他の奴は?」
仕事だと呟くブレイリー。
「ふぅん。まぁいいや、それより今日は一体どうしたのさ。」
自分で話を振っておきながら何なんだと言ってしまいそうになるのをなんとか堪える。
そんな事を言えば後々面倒なことになりかねない。
ブレイリーとロイルは誰にも気づかれないように小さくため息をつく。
そして気を取り直すように、ロイルは先ほど来た目の前に居る2人を見つめる。
「フェア、リーヂーあの方は来られて居ないわ。ブレイリーそうよね?」
すっと視線を送ればブレイリーはそれに頷き、何も無い空中を仰いだ。
それにつられるようにロイルも空中を仰ぐ。
そして今まで終始無言だったリーヂーと呼ばれた者は、隣にいるフェアを見つめる。
それに気が付いたフェアは、にやりと口元をゆがめ被っていたフードをはずした。
すると、フードの中におさまっていたであろう髪が重力に従って下に落ちていく。
ハッと、息を飲むぐらい美しい深緑の髪は肩ぐらいの位置で乱雑に切られいて、パッと見では男なのか女なのかわからなく、前髪が長く顔がよく見えないがおそらく相当綺麗な顔立ちをしているにちがいないと思われる。
「約束の時は近い………だが、役者が揃わなければ何の意味も無い…。そこでお前達には…。」
「キャストに招待状を出せばいいのね?」
ブレイリーの言葉をつなぐように言うロイルに、フェアは狂ったように笑いだした。
「いいねぇ、それ。楽しい余興を始めるのにもキャストが居なきゃなぁんにも意味がないからねぇ…フハハハハハハ!!」
狂った笑い声が始まりの合図のように………
私達の中で
止まっていた時間が
動き出す…………