TOXIC ―不適合な奴等―
「んじゃぁごっそさん。また来るよ」


 しばらく茶を頂きながら、些末(サマツ)な世間話と将棋に華を咲かせた後、すっかり更けったのでおいとまする事にした。


「ぅん。またね」


 あぐらをかいてひらひら手を降る王は、どこか可愛らしい。
 戸を開けてノレンを潜ろうとした時、


「あ~ロスちゃん」


「ん?」


 振り向いて首を傾ぐ。

 眼を瞑りふぅと紫煙を吐いたのち、眼を開いて言った。


「街に外からの不穏な者共が入ってるよぅ。気ィ付けなさい」


 一瞬、先程までの王とは別人の顔をする。
 背筋に痺れを走らせていく程、冷たい顔。

 だがすぐに元の可愛らしい老人へ戻り、くちゃっとした笑顔で笑う。


「……どうも」


 帽子を軽く下げ、一礼して骨董屋を出た。

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