TOXIC ―不適合な奴等―
 男の居る部屋は、まるで個人事務所のような様相だ。
 こじんまりとしていて薄汚い、窓は一部板張り。
 ぼろい木製のブラインドは所々欠けている。

 吸い殻の溢れる灰皿に煙草を押し付けて立ち上がった。


「…しゃぁねぇ、行くか」


 帽子の埃を払い、被り直す。
 ダルそうな猫背を一度伸ばして、また丸めた。


「うへぇ~ぇ」


 ポケットに手を突っ込み、戸に向かう。
 掛けてあったポンチョを取り、肩に掛けると、鏡が眼に入る。


「…シケてんなぁ」


 自らの面を見てぼやき、にぃっと笑って嘆息。
 戸に手を掛けて、その部屋を後にした。

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